●情報センターお知らせ
No.2 禁煙のすすめ
2015.08.05
日本の喫煙率は男性39.3%、女性11.3%と欧米諸国に比べると高い割合になっています。
欧米以外の香港、シンガポール、タイ、台湾などのアジア諸国でも国家的な喫煙対策が進んでいます。
わが国の喫煙対策はアジア諸国の中でも遅れており、禁煙に対する認識も低く、世界の潮流から大きく遅れをとっています。
タバコの煙にはどういう成分が含まれているの?
タバコ煙に含まれている成分の主なものにはニコチン、多環芳香族炭化水素、一酸化炭素などがあります。
ニコチンには強い依存性があり、アルコールなどに比べ離脱するのが難しいとされています。
またニコチンは交感神経系を亢進させる作用があり、不整脈を引き起こすと報告されています。
さらにインスリン抵抗性を増大させることにより、糖尿病の発症リスクが高くなるとも言われています。
多環芳香族炭化水素とは複数のベンゼン環が縮合した物質の総称で、有機化合物の不完全燃焼で発生します。
タバコ煙にはアントラセン、ベンズ[a]ピレンなど20種類以上の多環芳香族炭化水素が含まれ、その多くは発がん性を有します。
また多環芳香族炭化水素は別の物質とともに生体に取り込まれることによって、その物質のアレルギーを誘発する作用を有しています。
花粉やダニなどによるアレルギー性疾患も喫煙や受動喫煙によって発症リスクが増大します。
一酸化炭素は炭素化合物の不完全燃焼によって発生し、ヘモグロビンと結合して赤血球の酸素運搬能を奪うほか、代償性に多血症を引き起こし、血管内の血栓形成を促進します。
タバコ煙には主流煙と副流煙があることは知られていますが、主流煙に比べ副流煙のほうがニコチン5.25倍、ベンゾピレン8.07倍ホルムアルデヒド11.6倍、アンモニアについては432倍多く含まれていることはあまり知られていないようです。(マイルドセブンの場合)
なぜタバコが吸いたくなるの?(ニコチン依存症とよばれる理由)
タバコは体に良くないとわかっていても吸い続けてしまうのはどうしてでしょうか?
意志が弱いから?では意志が強ければタバコはやめられるのでしょうか?
タバコがやめられないのは決して意志だけの問題ではありません。
タバコを習慣的に喫煙しているということはニコチン依存症であり、これは精神疾患の一つです。
習慣的に摂取していた物質が身体からなくなると不快な症状が出現することを離脱症状といい、タバコをやめようとすると不安になったり、気分が沈んだり、イライラしたりすることをさします。
そして離脱症状を解消するために再び喫煙すると、体内にニコチンが取り込まれ低下していた機能が回復する、これが身体的依存です。
身体的依存が確立され、タバコを吸うことで気分が良くなる、ストレスが解消されると思い込んでしまうと、精神的依存がより強くなっていきます。
精神的依存が強くなるとタバコを吸う手段を選ばないようになり、あらゆることを差し置いても喫煙するようになってしまい、さまざまな問題が生じてきます。
このように依存症には身体的依存と精神的依存があり、回復はしても治癒することは難しいとされています。
タバコを吸い続けるとどうなるの?
タバコの煙には細胞レベルでの発がん性が確認されている物質が60種類以上も検出されており、タバコの発がん性は科学的根拠に裏づけされたものです。
またタバコによるがんは肺癌だけと思い込んでいる人が多いと思いますが、喫煙による発がん率上昇は全身の臓器にまで及んでいます。
口腔内に沈着した発がん物質は喉頭癌や咽頭癌の原因となり、唾液とともに嚥下され食道癌の原因にもなります。
さらに肺の毛細血管から酸素とともに吸収された発がん物質は血液を介して全身を廻り、肝臓癌ほか全身のがんに関与しています。
また女性については乳癌や子宮頸癌の罹患率が高くなります。
がん以外の疾患では慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息をはじめとする呼吸器疾患や、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、メタボリック症候群などのリスクが高くなります。
禁煙したいとは思っているんですが・・・。
禁煙をすることは、今では禁煙治療と位置づけされ、一部の医療機関での保険適用が可能になりました。
我慢だけで禁煙を成功させようと努力してきた方も多くいらっしゃると思いますが、最近では色々な種類の禁煙補助薬が開発され、以前に比べて禁煙の成功率がより高くなってきています。
多くの禁煙外来では、薬物療法で身体的依存の離脱症状を緩和し、カウンセリングにより精神的依存をサポートするといった方法がとられています。
禁煙を考えている方は、堅苦しく考えずに、気軽な気持ちで禁煙外来を受診することをお勧めします。
また禁煙補助薬の中には薬局で販売されているものもありますので、薬局の薬剤師に相談していただくのも一つの方法です。
禁煙補助薬ってどんなのがあるの?
日本においては禁煙治療のための補助薬として、ニコチン製剤とバレニクリン酒石酸塩製剤が認可されています。
ニコチン製剤はニコチンの脳内供給の段階に関与して、喫煙の変わりにガムまたはパッチからニコチンを供給し、ニコチン血中濃度を快適とニコチン切れ(離脱)の間でコントロールしつつ、段階的にニコチンの供給量を減らし、最終的にニコチン供給を止める「ニコチン置換療法」に用いられます。
ニコチン製剤は保険適用されるものと、薬局で販売されているものがあります。
バレニクリン酒石酸塩製剤はニコチンの脳内での作用の段階に関与して、脳内のニコチン受容体に対してニコチンよりも高い親和性を持っているため、ニコチンが結合するのを阻害します。
このためバレニクリン酒石酸塩製剤服用中に再喫煙した場合は、喫煙による満足感が抑制されます。
またバレニクリン酒石酸塩にはニコチン受容体を部分的に刺激する作用があるので、禁煙に伴う離脱症状や、タバコに対する切望感を軽減しながらタバコをやめることができます。
バレニクリン酒石酸塩製剤は医療用禁煙補助薬になりますので、医師の処方せんが必要になります。
過去の一覧
- 2016.05.30
- No.17 不眠症と薬物療法について
- 2015.08.19
- No.16 日焼け対策と美白化粧品について
- 2015.08.18
- No.15 お薬の副作用について
- 2015.08.17
- No.14 食物アレルギーについて
- 2015.08.16
- No.13 熱中症について