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No.4 味覚障害について
2015.08.07
味覚障害とは?
味覚障害という言葉をご存知でしょうか?
味覚障害とは食事をしても味を感じない、何を食べても味が薄く感じる、逆に何も食べていないのに苦味を感じるなど、味覚に異常が起こる病気です。
味覚障害の原因には食生活によるもの、薬物によるもの、病気によるものなど、様々なものがあげられます。
ここでは味覚障害の原因と治療についてご紹介させていただきます。
味覚障害の原因
偏食が多いと食物から味覚機能を維持するために必要な亜鉛が十分に摂取できず、血液中の亜鉛の量が少なくなります。
亜鉛は体内の約20%の部分に分布し、特に舌上皮には豊富に存在しています。
成人の亜鉛の1日必要摂取量は15mgといわれ、牡蠣、緑茶、牛肉、豚肉、うなぎ、ナッツなどに多く含まれています。
亜鉛欠乏の原因として、偏食や不規則な食事習慣によって亜鉛の摂取量が低下する場合が多いのですが、最近の加工食品の添加物には亜鉛の吸収を妨げたり、体内の亜鉛を排泄してしまう化合物が多く含まれていることも報告されています。
これもまた亜鉛欠乏をきたす原因のひとつとされています。
亜鉛が不足すると、舌表面に分布する味覚受容体である味蕾(みらい)細胞の代謝が低下し、細胞の生まれ変わりが遅くなって味覚受容体の感度が低下することで、味覚低下につながると考えられています。
薬物が原因の味覚障害
薬剤性味覚障害は、薬剤が長期間、しかも複数処方されている高齢者に多く見られます。
薬物が体内の亜鉛とキレート結合し、亜鉛が体外へ排出され、結果的に亜鉛欠乏を来たすことで味覚障害が生じると考えられています。
薬物の構造によっては亜鉛とキレートを作る力が非常に強く、副作用として「味覚障害」、「味覚低下」、「味覚減退」、「味覚異常」、「味覚変化」、「味覚消失」のほか、「苦味」、「口内苦味感」などが挙げられている薬剤は少なくはありません。
味覚障害または苦味を感じる主な薬剤をご紹介いたします。
味 覚 障 害 |
抗悪性腫瘍薬、糖尿病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、降圧薬、 痛風治療薬、消化性潰瘍薬、高脂血症用薬、抗ウイルス薬、催眠鎮静薬、解熱鎮痛消炎薬、 骨粗鬆症治療薬、抗アレルギー薬、抗生物質、不整脈治療薬、気管支拡張薬、 抗甲状腺ホルモン薬、等 |
苦 味 |
催眠鎮静薬、抗うつ薬、不整脈治療薬、抗アレルギー薬、等 |
※ 上記医薬品において必ずしも味覚障害や苦味の症状がでるとは限りません。
※ 症状の現れかたには個人差があります。
味覚障害の治療
体内での亜鉛の量が不足して味覚障害が生じている場合は、亜鉛を摂取すると7割以上の効果が得られます。
亜鉛を摂取する方法としては、食事習慣を改善し偏食をなくして十分な亜鉛を食事から摂取する方法や、食事から十分な亜鉛が得られない場合は、サプリメントや亜鉛を含む製剤を服用するのも有効といえます。
服用している薬剤が味覚障害の原因と疑われる場合には、処方医と相談してその薬剤を減量するか、または可能であれば他剤に変更してもらうのがいいでしょう。
ただし薬物が原因の味覚障害であると判断するのは非常に難しく、原因と思われる薬剤を服用し始めてから味覚障害の症状が出現したこと、その薬剤の服用を中止することで症状が改善されたことが確認できれば両者の間に因果関係があると判断できますが、実際にそれを証明するのは困難と思われます。
薬物が原因と思われる味覚障害に対しても、亜鉛製剤を補助的に服用することで症状は改善されます。
風邪を引いた後などに味覚や嗅覚が低下し、いわゆる「風味障害」が起こることがあります。
風邪を引いたことで味覚神経が障害を受けたり、味蕾細胞の変性や、亜鉛が欠乏することで発症すると考えられています。
風邪が治れば味覚障害も消失することが多いですが、高度の味覚障害で神経障害が疑われる場合には、ステロイドの漸減療法と亜鉛製剤の併用が有効です。
味覚障害は直接命にかかわる病気ではありませんが、日常生活を送る上でおいしく食事がいただけないというのは大変な苦痛といえます。
味覚障害の専門医はまだまだ少ないですが、耳鼻咽喉科の先生が味覚障害を診察してくださる場合が多いです。
味覚障害かな?と思ったときはできるだけ早く受診し、根気よく治療を続けることでかなり改善はされます。
命にかかわる病気ではありませんが、生活の質を向上させるためにもきちんと治療に取り組むことが大切です。
過去の一覧
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